愛を待つ桜
長兄の結婚祝い、妹の帰国、そして、自身も間もなく出産を控え……由美から見れば、この上なくおめでたい集まりだ。
彼女がはしゃいだとしても、誰も責められない。


「やっぱりひとりっ子じゃ可哀想ですもの。亮子さんや夏海さんも、まだお産みになるんでしょう?」


悪気のない由美の言葉を受け、亮子はさりげなく夫を庇った。


「女の子も可愛いですよ。でも、由美さんも夏海さんもまだまだ20代でお若いから。私はもう年が年なので……」

「やだ、まだ32歳でしょ? お若いですよ。最近じゃ35歳以上が丸高って言うし。ねえ夏海さん」


どうやら由美は、一条家の外聞を憚る諸々の事情を聞かされていないらしい。

夏海はそのことに気づくが、稔の顔を潰すようなことはできず。由美にとっても、知らされてなかったことで疎外感を覚えるかも知れない。


「そう、ですね。でも、子供は授かりものですから。私もつい先日まで、子供は悠ひとりと思って来ました。先のことは、何も考えてないんです。それに……うちの場合、とっくに聡さんが丸高だし」


夏海は、精一杯、双方の顔を立てたつもりだった。

それに呼応してくれたのが静だ。


「上手いこと言うじゃない!」 


夏海にウインクしながら、声を立てて笑う。


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