愛を待つ桜
聡は色々言っていたが、こうして偶然会ってしまったのだから、この際ハッキリさせよう。
夏海はそう思い立つ。

匡は、特に表情は変えず「何?」と聞き返した。


「聡さんに……私が匡さんの恋人であったようなことをおっしゃいました?」


その瞬間、匡は口に運んだばかりのコーヒーを吹き出した。


「そ、それは、その……昔、ね。そういうようなことを言ったかも知れない……けど、この間、ちゃんと謝ったよ」


夏海との結婚で弟の嘘を知ったであろう聡に、両手を合わせて謝った。
夏海にも直接謝ろうか? と尋ねたが、聡が断わったのだ。
匡の中では、もう済んだこと、だと思っていた。――匡はそんな風に夏海に説明する。


「ひょっとして、悠くんが生まれたときに結婚しなかったのって……俺のせい?」


心底すまなそうに話す匡を、これ以上責めるのも躊躇われた。


「あ、いえ、いいんです。じゃあ、聡さんは、それが誤解だとご存知なんですね?」

「ああ、もちろんだよ。判ったって言ってたけど……あ」


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