愛を待つ桜
「はぁ? それって、俺に聞いてる訳?」
「とぼけるなっ!」
気の抜けた匡の返事に、再び聡がいきり立つ。
「兄さん!」
稔が慌てて割り込んだ。
聡が怒鳴るたびに匡は目を白黒させている。それは稔にしても同じだ。
聡が最初の結婚で家を出たのは、稔が高校を卒業した直後のこと。結局すぐに離婚したものの、彼が家に戻ってくることはなかった。
だが弟妹にとっては、聡はいつまでも頼れる優しい兄。
父親に対して反抗はできても、兄には逆らえない。そんな空気が兄弟の中では当然のように漂っている。
いくら放蕩者とはいえ匡が聡の妻を誘惑するとは、稔には信じられない。
「父さん……妙なことを口にしないでくれ。父さんが言い出したのかい? だから、兄さんがこんなに怒ってるんだろう?」
「とぼけるなっ!」
気の抜けた匡の返事に、再び聡がいきり立つ。
「兄さん!」
稔が慌てて割り込んだ。
聡が怒鳴るたびに匡は目を白黒させている。それは稔にしても同じだ。
聡が最初の結婚で家を出たのは、稔が高校を卒業した直後のこと。結局すぐに離婚したものの、彼が家に戻ってくることはなかった。
だが弟妹にとっては、聡はいつまでも頼れる優しい兄。
父親に対して反抗はできても、兄には逆らえない。そんな空気が兄弟の中では当然のように漂っている。
いくら放蕩者とはいえ匡が聡の妻を誘惑するとは、稔には信じられない。
「父さん……妙なことを口にしないでくれ。父さんが言い出したのかい? だから、兄さんがこんなに怒ってるんだろう?」