愛を待つ桜
稔は当時、本社勤務ではなかったが、匡のいささか羽目を外した秘書との火遊びは耳にしていた。
当たり前だが、それらから夏海が除外されることも。
そんな彼にしたら、どう考えても父の質問は愚問としか思えない。


「お前には関係ない。口を挟むな」


稔と父親の仲は未だギクシャクしたままだ。


「でも、父さん……」

「答えるんだ、匡!」


実光は、稔を無視して、匡を詰問する。

しかし、次兄が味方になってくれると思った瞬間、匡も顔を上げ言い返し始めた。


「だから、何でそうなるんだよ!」

「聡は、悠がお前の子であっても構わないと言っとるんだ。新婚家庭に波風を立てまいと、あえて親子鑑定もせずに、実子として届け出た。匡、いい加減聡の気持ちも判ってやれ」


実光は興奮を抑え、諭すように三男坊に話しかける。

だが、匡には寝耳に水の話だ。


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