愛を待つ桜
「だから、悪かったって。相手が彼女なら、父さんも文句言わないと思ったんだ。いや、だって彼女の方も断わりたがってたし、破談になるなら問題ないかな、って。やけに父さんが買ってたから、ちょっと遊んでる風に言ったっていうか……」

「お前……お前は、なんという愚かな真似をしたんだ! そのせいで夏海くんがどんなに苦労したと思っとる! この大馬鹿者がっ!」


とんでもないことをヘラへラ笑いながら告白する三男坊に呆れ果て、実光は激昂して匡の頭をバシバシ叩いた。

そんな父の鉄拳から逃れながら、匡は懲りずに言い訳を続ける。


「まさか、兄貴とそんな仲だなんて知らなかったんだ。知ってたら絶対に言い訳に使ったりしなかったよ。本当だって!」


悪意がないということは、匡にすれば悪いことをしたという自覚もない。始末に負えないとはまさにこのことだろう。


当初、匡が父や兄にどんな嘘を吐いたか判らず、黙って聞いていた稔だったが、


「おい、匡! 何の関係もない人間を巻き込んで、そんな言い訳が通ると思ってるのか? すべてお前のせいだぞ。お前の吐いた嘘が由美さんの耳に入って、それが原因でこんなことになったんだ。どうする気だ!」

「稔の言う通りだ。ああ、なんと言う事だ。幾つになっても……どうしてお前はまともにやれんのだ!」


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