愛を待つ桜
「兄さん、良かったじゃないか。全部、誤解だったんだよ。これから親子3人で」


「クッ……ククク……ア、ハハハ……誤解? 誤解か、それは良かった……あははは……」


唐突に笑い出した聡に、みんな首をかしげる。

ホッとした笑い方ではない。

まるで、精神のバランスがおかしくなったかのような笑い方だ。


「なあ、兄貴。俺、夏海さんにも謝ったよ。さっき言った事情を話して、申し訳なかったって。夏海さんは『もう済んだことだから』って許してくれたんだ。だから……兄貴?」


それまで床に座り込んでいた匡だったが、恐る恐る立ち上がった。
彼はゆっくりと後ずさりしながら聡に話し掛ける。

どう見ても聡の様子は変だ、匡を許してはいない。そんなふうに感じたからだ。
いきなり殴りかかられることを恐れ、少しでも離れようとする。


だがこのとき、聡の眼中から匡の存在など消えていた。

そして、まるで独り言のように呟き始める。


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