愛を待つ桜
――失態は3年前だけではない。


そのことに気付いたとき、膝から力が抜けた。
そのまま背中が壁を擦り、崩れ落ちるように聡は床に座り込む。


「とにかくだ。聡、お前は家に帰れ。大きな誤解があったんだ。夏海くんには後で私からも謝罪する。彼女のことだ、ちゃんと謝れば判ってくれるだろう。お前にも悪気があった訳ではないんだ」


そんな父の提案に、聡は力なく首を振った。


「もう遅い。手遅れだ。電話で匡とのことを聞いて……俺は夏海に、悠を置いて出て行くように言った。裁判にしても取り上げる、と」

「……それで夏海さんがいなかったのか」


稔は聡が子供を亮子に預けた理由が判り、得心したように呟いている。


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