愛を待つ桜
夏海の中の聡への愛情は消えてしまった。

ただ、謝罪の言葉を聞きたい。
それも直接聞かなければ納得ができない。

それだけのはずだった。


夏海が玄関に足を踏み入れたとき、そこは異様なほど静まり返っていた。

その静寂の中、夏海の耳に届いた言葉――『愛している』。

それは彼女がずっと待ち続けた、聡の愛の言葉であった。


「弁護士を辞めて、どうするの?」

「さあ……どうするか」

「どうして辞めるの?」

「正義の天秤を振りかざすのに、私は相応しくない。ひとりの人間の人生を踏み躙って、守るべき我が子すら放り出した。知らなかったでは許されない罪だ。私は裁かれるべきなんだよ」

「あなた自身がそれをするの? それって不公平だわ! あなたを罰する権利は、私にあるんじゃないの?」


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