愛を待つ桜
泣きじゃくる夏海に、聡は居た堪れなくなった。

次の瞬間、思わず手を伸ばし、夏海を抱き寄せていた。


「すまない。許してくれなくてもいい。お願いだ……頼むから、泣かないでくれ。お腹の子供に悪い。私のことは忘れて、君は幸せに」

「バカッ! なんで判ってくれないの!」


夏海は両手で聡の胸をバンバン叩きながら叫ぶ。


「全部、嘘だったの? 愛してるって、結婚しようって言ったのも。抱くためだけの嘘だったの? 本当は智香さんのことを……」

「違う! 言ったはずだ。智香と結婚するつもりは全くなかった。それだけは」

「じゃあどうして!? 言ってよ! ちゃんと言って! 言ってくれないと許さない。一生許さないわ」


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