愛を待つ桜
「お願い、もっと……もっと聴かせて」

「ずっと……不安だった。女性から、金以外は求められたことがない。セックスもけなされるだけだった。だから、本当に愛されているのか不安で……。匡の言葉を真に受けたのも、それが原因なんだ。君に捨てられるのが怖くて……あんな酷い言葉で先に捨てたんだ。愛していた。結婚したかった。ずっと、それだけが願いだった!」



それは、待ち侘びた言葉だった。


理想とは違う。

今の聡は夏海の下半身にしがみ付き、まるで幼児《おさなご》のように泣きじゃくっている。

クールでもかっこ良くもない聡の涙は……枯れかけたふたりの愛に命を与え、あっという間に、夏海の心に満開の花を咲かせたのだ。


夏海はそんな聡の髪を撫で、包み込むように抱き締めた。

そして、彼と同じように跪く。


「じゃあ聡さん、私ともちゃんと結婚して」


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