愛を待つ桜
その智香だが……。

由美に妄想を吹き込んだやり方はあまりに卑劣で、今度ばかりは告訴するつもりでいた。
しかし、智香の両親は再び彼女を海外に出したのだ。それも、病気療養の名目で。こうなると、とても責任能力は追求できそうにない。



「すまんな。色々面倒を掛けた。借りは必ず返すから」

「こっちに返す前に、まず女房だろ。お慈悲で傍にいてもらえるんだからな」

「判ってる。夏海には一生頭が上がらない。妻でいてくれるだけで、この上なく幸せだ」


教会の扉が開き、父と腕を組んだ夏海の姿が見えた。聡が出逢ったときから着せたくて堪らなかった真っ白いウエディングドレス。

純白のドレスに身を包み、夏海は聡を見つめ、バージンロードを一直線に歩いてくる。

視線が合うと、聡の頬は自然に緩んでしまう。

同時に、夏海も幸せそうにはにかんだ。


「なんて綺麗なんだ」


そう呟いたまま、聡は蕩けそうな表情で妻に見惚れていた。


その横で、如月は笑いを堪えるのに必死であった。



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