愛を待つ桜
先月末頃、聡は何日か帰りが遅かった。



『クライアントの接待なんだ。如月には普段無理を言ってるから、奴に押し付けてばかりじゃ悪いだろう?』


聡は何でもないように笑ったが……。



「家と違うボディソープの匂いがしたの。それって……よそでお風呂に入ってきたってことでしょ? 髪も濡れてた気がするし」

「えーーっと」


さすがの双葉も返事に困り始めたようだ。


「悠のことは、今まで以上に面倒みてくれるのよ。それに、誕生日のプレゼントは、トーマスの機関車セットにしようって言ってるの。最近お気に入りだから……それで100万も掛かるはずがないでしょう?」

「あ、ほら家を買ったじゃない。うちの近くに。内装とか家具とかに使ったんじゃない?」

「新居の家具なら私に内緒にしなくても……」


それに、引越しは来年の3月初旬である。家具などはデパートの人間がカタログ持参で家までくることになっていた。その時に全部決めようと話し合っている。


「でも……一条くんて、なっちゃん以外の女性はアウトだったでしょ? 浮気なんて出来っこないわよ」

「ひょっとしたら、大丈夫になったのかも。だって……聡さんて1度始めたら3回くらいしたがるのに……。今は赤ちゃんがいるからって1回で我慢してくれてるの。それも週に4日くらいだし。欲求不満になってるのかしら? 双葉さん、どう思います?」


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