愛を待つ桜
「ママーッ。悠が上がるよ。着替えは出てるか?」




双葉に相談した数日後のこと。

翌日に悠の3歳の誕生日を控え、夏海は別の証拠を見つけてしまったのである。


この数ヶ月で、悠はパパと一緒にお風呂に入るのが習慣となっていた。


『パパぁ~おふろ~』


自分でボタンが外せるようになった悠は、嬉しそうにさっさと裸になってしまう。

そして、帰って来たばかりの聡を、風呂場まで引っ張って行くのだ。

聡は苦笑いしつつ。可愛い息子の為、仕事は7時で切り上げてくるようになった。


『ただいま、夏海。君も一緒に入るかい?』


聡は歩きながらスーツを脱ぎ、夏海に声を掛ける。


『さすがに3人で入るには狭いわ』

『新居の風呂場はここより広い。皆で入れるぞ。それか……子供たちを寝かせてから、2人で入っても』


上着を夏海に手渡した後、ネクタイを外しながら聡の瞳はらんらんと輝き始めた。

聡はそうっと夏海に口づけ、そのまま耳元で『後で一緒に入ろうか?』掠れた声で妻を誘惑するのだ。そんな夫の誘いに抗える夏海ではない。

夏海は、はにかんだ笑顔を作りながら頷いた。


『あぁっ! パパがママにチューした! ぼくもっ』


そう言って悠は聡に飛びついたのである。


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