愛を待つ桜
夏海は聡のスーツを持ち、クローゼットに仕舞いかけた。

双葉に話したように、11月の終わりに、聡の帰宅が数日だけ遅くなったことがある。ボディソープの匂いも、その内の1日だけのことだ。

そう言えば、トレーニングジムに通おうか、みたいな話をしていた。それを始めたものの、途中で辞めてしまい……夏海に言うタイミングを逃しただけかも知れない。
 

(聡さんが浮気なんて……やっぱり、そんなはずないわ)


カードを使って購入した物も、双葉の言うように新居関係の費用なのだろう。

そう思った直後、上着から取り出した鍵などと一緒に1枚のレシートが夏海の目に入った。

広げて見ると、夏海もよく知っているヒルサイドにある花屋のレシートだ。『プリザーブドフラワー(特注)』と書かれていて3万円近くしている。

仕事関係で花を届ける場合もある。だが、それらの手配を聡自身がするはずがない。男性が花を買って贈るとなると……相手は当然女性だろう。



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