愛を待つ桜
「おーい、ママーッ! どうしたんだ?」


次第に声が近づいてくる。

聡と悠の気配を感じたが、夏海には振り向くことが出来ない。


「マーマぁ……どうしたの? おなか、いたいの?」


夏海に駆け寄った悠は、母の異変を感じ取り不安そうな声を出す。

それに驚いた様子で、夏海に走り寄ったのが聡だ。


「どうしたっ!? 具合が悪いのか? すぐに救急車を」


お腹の子供に何かあったのかと思ったらしい。


だが、突如夏海が声を荒げたのだ。


「この花って誰に贈ったの? 聡さんには花を上げるような女性がいるの? 私も知ってる人なら……どうして相談してくれないのっ!? 聡さんの馬鹿っ!」


夏海の泣き声に、悠も驚き泣き始める。


「ごめんなさい。ママぁ、ごめんなさい」

「違うの。ゴメンね、悠くんに怒ってるんじゃないのよ。泣かないで……」


バスタオルに包まり、ホカホカと温かい悠を夏海はぎゅうっと抱き締めた。


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