愛を待つ桜
「で、花は誰に贈ったの?」


夏海が、皆に見せたくて、と付けて来たエタニティリングに呆れた視線を送りながら……双葉は尋ねた。


「それが……」


プリザーブドフラワーというのは、生花のままの色合いが何年も楽しめる花だという。水遣りもお手入れも不要らしい。

なんと聡は、春に産まれてくる息子か娘の為にと、新居の子供部屋に飾っていた。


「悠にプレゼントを買ってたら、お腹の赤ちゃんにも上げたくなったんですって」


悠の時に出来なかったことをしたかった、と聡は言う。

夏海に黙っていたのは、与えるのはお金や物である必要はない、と言われるのが判っていたからだ、と。


「悠の為に早く帰って来てくれることや、お腹の赤ちゃんに言葉を掛けてくれるだけでいいのにね。聡さんの愛情に勝るものはないのに……。でも、形に変えようとしてくれるのも愛情なのよね。だから、何も要らないって断わるだけじゃなくて、ありがとう、嬉しい、って伝えることも大事なんだって気付いたの。いつか、金額は関係ないんだって伝わると信じてる」


嬉しそうに話す夏海を見ながら、双葉はにっこりと微笑んだ。


「じゃ、ソープ疑惑も解消されたわけね。なんだったの?」

「それは……内緒、かなぁ」

「何それ! 心配させておいて、白状しなさいっ!」

「ごめんなさい、双葉さんっ」


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