愛を待つ桜
家の納戸で悠《ひさし》は鯉のぼりを見つけた。それは毎年立てる大きな鯉のぼりではなく、長さ1メートル程度の小さなもの。
悠の記憶の中にある“初めての鯉のぼり”だった。
今日、悠の弟・真《まこと》が小学校に入学した。
つい先日7歳になったばかりだ。紺色のブレザーに同色の半ズボン、一人前にエンジ色のネクタイまで結ぶ。つい先日まで黄色の幼稚園帽子を被り、ブルーのスモックを着ていたのが小学生に見えるから不思議だ。
「ただいまぁ! お兄ちゃん! 僕、学校でね、お兄ちゃんそっくりって言われたよ!」
幼稚園の時も言われた。どこに行っても言われる「悠くんも、桜《さくら》ちゃんも、真くんも、パパそっくりね」と。
悠にはいささか、聞き飽きた台詞だった。
真は初めて背負ったランドセルをソファに下ろすと、ダイニングカウンターに座る悠の前まで走って来た。
そして少し落ち込んだ様子で……。
「でも……お兄ちゃんみたいな、新入生代表の挨拶は出来なかったんだ」
悠の記憶の中にある“初めての鯉のぼり”だった。
今日、悠の弟・真《まこと》が小学校に入学した。
つい先日7歳になったばかりだ。紺色のブレザーに同色の半ズボン、一人前にエンジ色のネクタイまで結ぶ。つい先日まで黄色の幼稚園帽子を被り、ブルーのスモックを着ていたのが小学生に見えるから不思議だ。
「ただいまぁ! お兄ちゃん! 僕、学校でね、お兄ちゃんそっくりって言われたよ!」
幼稚園の時も言われた。どこに行っても言われる「悠くんも、桜《さくら》ちゃんも、真くんも、パパそっくりね」と。
悠にはいささか、聞き飽きた台詞だった。
真は初めて背負ったランドセルをソファに下ろすと、ダイニングカウンターに座る悠の前まで走って来た。
そして少し落ち込んだ様子で……。
「でも……お兄ちゃんみたいな、新入生代表の挨拶は出来なかったんだ」