愛を待つ桜
振り返った母の目は大きく見開かれていた。

驚き過ぎて、声も出ないといった感じだ。


「納戸で鯉のぼりを見つけたんだ。母さんが買ってくれたヤツだよ。あの時……僕に父さんはいなかった。戸籍を調べたんだ。僕が3歳になる年に父さんと結婚したんだよね? 僕、本当の父親が知りたい!」


春休みに鯉のぼりを見つけてから、ずっと悩んでいた。兄弟3人ともよく似ているから、考えたこともなかったけれど……。

父に不満はない。だが、桜や真に比べて、自分には厳しい気がする。血が繋がっていないなら、当然かも知れない。


「父さんと母さんの仲を壊す気はないんだ。桜や真も可愛がるつもりでいる。父さんのことも、尊敬してるし、大事だけど……でも」

「でも――なんだ?」


悠が振り向くと、そこに父が憮然とした表情立っていた。


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