愛を待つ桜
父と母は結婚する3年前に出逢った。
だが、仲違いをして……母は独りで悠を産んだ。父は悠が産まれたことすら知らなかったという。
父が息子の存在を知ったのが、悠の1番古い記憶の頃。
父の友人宅で大きな鯉のぼりを欲しがった悠のため、父は母と悠が暮らすアパートの近くに駐車場を借りた。そしてそこに、大きな鯉のぼりを立てたのだ。それがあの、庭で泳いでいるヤツだった。
だが、あの母の涙は……。
「母さんが泣いてたのはね。悠には、聡さんのことをパパだとは教えてなかったのよ。それなのに、父の日の似顔絵にちゃんと描いてくるから……。意地を張って実の親子を3年も引き離してしまって……悠に申し訳なくて」
「母さんのせいじゃない。全て愚かな父さんのせいだ」
そう言うと、父は悠の顔をジッと見た。
「お前は覚えていないかも知れないが……3年のブランクを埋めたくて、何でも買い与えて甘やかそうとしたんだ。そして、母さんに怒られた。今、厳しくしているのは、自分に似ているせいだろうな。ついつい、自分以上になって欲しい、と期待をしてしまう。お前が辛かったのなら謝る」
思えば……忙しい父だが、父親参観など悠の学校の行事には必ず出てくれた。桜や真の場合は、父が仕事を休むのは入学式くらいかも知れない。
母によると、最初の3年間の穴埋めのつもりだという。
「じゃ……僕は本当に一条の子供で構わないんだ」
ホッとした瞬間、少し……ほんの少しだけ悠の目に熱いものが込み上げる。涙を見せたくなくて俯く悠を、母は力一杯抱き締めてくれたのだった。
だが、仲違いをして……母は独りで悠を産んだ。父は悠が産まれたことすら知らなかったという。
父が息子の存在を知ったのが、悠の1番古い記憶の頃。
父の友人宅で大きな鯉のぼりを欲しがった悠のため、父は母と悠が暮らすアパートの近くに駐車場を借りた。そしてそこに、大きな鯉のぼりを立てたのだ。それがあの、庭で泳いでいるヤツだった。
だが、あの母の涙は……。
「母さんが泣いてたのはね。悠には、聡さんのことをパパだとは教えてなかったのよ。それなのに、父の日の似顔絵にちゃんと描いてくるから……。意地を張って実の親子を3年も引き離してしまって……悠に申し訳なくて」
「母さんのせいじゃない。全て愚かな父さんのせいだ」
そう言うと、父は悠の顔をジッと見た。
「お前は覚えていないかも知れないが……3年のブランクを埋めたくて、何でも買い与えて甘やかそうとしたんだ。そして、母さんに怒られた。今、厳しくしているのは、自分に似ているせいだろうな。ついつい、自分以上になって欲しい、と期待をしてしまう。お前が辛かったのなら謝る」
思えば……忙しい父だが、父親参観など悠の学校の行事には必ず出てくれた。桜や真の場合は、父が仕事を休むのは入学式くらいかも知れない。
母によると、最初の3年間の穴埋めのつもりだという。
「じゃ……僕は本当に一条の子供で構わないんだ」
ホッとした瞬間、少し……ほんの少しだけ悠の目に熱いものが込み上げる。涙を見せたくなくて俯く悠を、母は力一杯抱き締めてくれたのだった。