愛を待つ桜
(うちの両親は絶対に仲が良すぎる!)

   
家族で外出する時は決まって弟妹を悠に任せ、しょっちゅうふたりきりで楽しんでいる。

それには、悠が高1の頃にはすでに180センチあり、20歳以上に見られていたから、という理由も大きい。

また几帳面な性格を発揮して、充分に弟妹の保護者たる役目を果たすおかげだろう。

さらには、悠と紫は14歳も離れており、短大生のケースのように『パパ』という誤解すら簡単に受け入れられてしまう。

悠にすれば――付き合った女の子もいないし、そういった経験も皆無なのに、3歳の子供がいてたまるか! というのが正直な感想だ。

しかし、そうは見えないほど彼の外見は落ち着いており、父親譲りの風格が漂っていた。


一条家の子供たち4人は全員父、一条聡にそっくりだ。

親戚と集まっても必ずそう言われるし、名乗らなくても判るのだから便利と言えば便利かも知れない。

母の夏海はそれを嬉しそうに見ているが、父は母に良く似た子供が欲しくて仕方がなかったという。


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