愛を待つ桜
「ごめんね、お兄ちゃんにばかり押し付けちゃって」

「別にいいけどさ。でも……5人目とか、言わないよね?」

「いやあね、もうっ! お父さんもお母さんもそんなに若くありませんっ」


母は頬を染めて横を向くが……ふたりが充分に若く、夜も仲が良いことを悠は知っている。

標準以上に大きな我が家ではあるが、両親が窓を開けたままで――そういう場合は、悠がベランダに出ると筒抜けなのだ。


(でも、絶対に言えないよな……僕は将来気をつけよう)


相手もいないのに気の早い心配をしていると、突如、携帯電話が鳴った。

画面を見ると、思ったとおり桜。悠は苦笑しながら電話を取り、


『また迷ったのか? 何が見える? 場所を動かず……』

『お兄ちゃん、真が大変なの! すぐに来てっ!』


< 260 / 268 >

この作品をシェア

pagetop