愛を待つ桜
母に事情を話すと、母は父を呼んでくるので先に行くように言われた。

悠は急いで芝滑りが行われているゲレンデに向かう。


すると、そこには険悪なムードで3人の中学生くらいの少年に囲まれ、中央に真が立っていた。

小学5年の真も大柄だ。すでに160センチは超えている。悠に比べるとスポーツ万能な点が父に似ていて、体格もしっかりしていた。

そのため、一見すると中学生4人が睨み合っているようにも思える。

悠の姿を見て飛んできた桜の説明によると……。


桜が真を呼びに来た時、『もう1回だけ』と言って走って行ったらしい。

桜は渋々待っていたそうだが、しばらくして、中学生3人組が順番を無視して列に割り込んだ。

ここは無料のアトラクションのため、小学校低学年以下は親が付き添って利用可となっている。ちなみに上限は中学生。常駐する関係者はいない。

真はその不正が我慢ならず、


「中学生だろ? 順番守れよ」


と言ったらしい。

真の並んでいた列は子供ばかりだった。他の列の大人は厄介ごとに関わりたくないのか、我が子を抱えるとそそくさと立ち去ってしまう。
 
その事態にビックリした桜が、慌てて悠に電話してきたのだ。


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