愛を待つ桜
「まったく、あいつは……しようがないな」


それほど好戦的でない悠だが、弟妹を守るためなら果敢に立ち向かう勇気はある。

中学生相手に面倒なことはしたくないが……。そう思いつつ、荷物を桜に預け、真の側に行こうとしたとき、肩を掴まれた。


「まあ待て。もう少し、待ってやれ」

「父さん!」


引き止めたのは父だ。


高校1年の夏に身長は追い抜いたが、それ以外は中々乗り越えられそうにない。悠が1番似ていると言われる分だけ、彼にとってはプレッシャーとなっていた。

「どうして止めるわけ? じゃ、父さんが」

「真は真なりに、正しいと思ったことをしてるんだ。大怪我をしそうな場面じゃないし、しばらくあいつに任せよう」


父はのんびりと構えて様子見を決め込んでいる。

逆に、悠のほうがハラハラして心配が顔に出ていた。

これまで、何か困ったことがあるとすぐに頼られてきた。そんな弟の面倒をみることは煩わしくもあり、嬉しくもあった。


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