愛を待つ桜
「でも……反対に、あいつが誰かに怪我でもさせたら。係員とかやって来て、騒ぎになったら? まだ11歳なんだ。助けてやらなきゃ」

「歳は関係ないんだよ、悠。あいつが正しいと思って立ち上がったなら、父さんはそれを尊重してやりたい。そうやって、人は誰かを守ることを覚えていくんだ。最初からお前が出て行ってしまったら、真は守られたままだろう?」


父にそう言われた瞬間、悠自身が親から任せられてきた責任を思い出した。


弟妹に対して、様々な責任を負ってきた。

彼らを守ることは悠の使命だと思ってきた。でも……。



ゲレンデの上部で3人が真に手を出し始める。

多少小突かれたくらいじゃ、体格のいい真はビクともしない。ひとりが真の腕を掴んだ瞬間、悠は走り出したくなった。


だが、父はそんな悠の肩から手を放さない。

すると、誰かが係員に通報したらしく……。


係員が来た途端、真の周囲の子供たちが何か騒ぎ始めた。

たちまち、3人の中学生はおどおどし始めて、芝滑りのゲレンデから居なくなったのである。


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