愛を待つ桜
「正しいことをするのはいいが、自分や周囲に怪我がないように気を使いなさい。困ったときは人の力を借りることは恥じゃないんだ。その証拠に、さっきだって真を支持してくれた子供たちの力で、中学生たちは立ち去ったんだろう?」


皆が係員に、彼らが悪いと声を揃えて言ったそうだ。


父は真の行動を認めながらも手放しでは褒めない。第一、父の指示で係員を呼んできたのは母だったという。父はそのことを桜や真たちには言わなかった。



父が席を離れた隙に、真は悠に問い掛ける。


「あのさ……父さんて、僕のこと嫌いなのかな? 兄さんみたいに勉強が出来ないから……」


真を見ていると何年か前の自分のようだ。

父が自分には特別厳しく感じ、悠の場合は両親の結婚時期から、『実の父じゃないのかも』と悩んだこともあった。


「そんなことないさ。父さんは、真にもっと強くなって欲しいんだ。いつか……本当に大切な誰かを守るときのために」


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