愛を待つ桜
事務所に着いてすぐ、夏海は双葉に謝罪に行った。
電話で遅刻の連絡は入れてあったが、『疲れが出たのかうっかり寝過ごしてしまいました。遅れた分は昼休みに補います』……嘘は言ってない。
何の疲れかまで、報告する必要はないだろう。
しかし、事情を知られているだけに、昨夜のことも筒抜けのようでいささか後ろめたい。
「1時間も遅れてしまって申し訳ありませんでした。それから、昨日はどうもありがとうございました。悠も喜んでました」
「いいえ、どう致しまして。遅刻は気にしなくていいわ。ボスもまだ来てないから」
「そう、ですね……」
聡はオフィスのすぐ裏にあるレジデンスに住んでいる。
彼は夏海を降ろすと一旦自宅に戻った。しわだらけのスーツで出勤するわけにはいかないからだ。
夏海とは別に、1時間ほど遅れると連絡を入れたようだが――。
歯切れの悪い夏海の様子を見て、双葉はクスッと笑った。
「もちろん知ってますって顔ね。昨夜はあなたの部屋? 裏のマンションなら遅刻はしないでしょ。まさかホテルってことは……」
「子供連れでホテルなんて行きません! ちゃんと、家に帰りました」
「一条くんも一緒に?」
「それは……送っていただいて、あの……」
しどろもどろになる夏海を見ていると、ついつい苛めたくなるようだ。
「ゴメンゴメン。後は彼に聞くとしましょう。でもまさか、うちの車でしちゃった……なんてことは」
「してません!」
真っ赤になって否定する。
明るくストレートな双葉にからかわれながらも、おかげで少し気持ちが軽くなる夏海だった。
電話で遅刻の連絡は入れてあったが、『疲れが出たのかうっかり寝過ごしてしまいました。遅れた分は昼休みに補います』……嘘は言ってない。
何の疲れかまで、報告する必要はないだろう。
しかし、事情を知られているだけに、昨夜のことも筒抜けのようでいささか後ろめたい。
「1時間も遅れてしまって申し訳ありませんでした。それから、昨日はどうもありがとうございました。悠も喜んでました」
「いいえ、どう致しまして。遅刻は気にしなくていいわ。ボスもまだ来てないから」
「そう、ですね……」
聡はオフィスのすぐ裏にあるレジデンスに住んでいる。
彼は夏海を降ろすと一旦自宅に戻った。しわだらけのスーツで出勤するわけにはいかないからだ。
夏海とは別に、1時間ほど遅れると連絡を入れたようだが――。
歯切れの悪い夏海の様子を見て、双葉はクスッと笑った。
「もちろん知ってますって顔ね。昨夜はあなたの部屋? 裏のマンションなら遅刻はしないでしょ。まさかホテルってことは……」
「子供連れでホテルなんて行きません! ちゃんと、家に帰りました」
「一条くんも一緒に?」
「それは……送っていただいて、あの……」
しどろもどろになる夏海を見ていると、ついつい苛めたくなるようだ。
「ゴメンゴメン。後は彼に聞くとしましょう。でもまさか、うちの車でしちゃった……なんてことは」
「してません!」
真っ赤になって否定する。
明るくストレートな双葉にからかわれながらも、おかげで少し気持ちが軽くなる夏海だった。