愛を待つ桜
聡はため息を吐くと、手にした水割りのグラスを一気に呷った。
「夏海は私の子だと言って譲らない」
「お前もそう思ってるんだろ?」
「だったらなぜ、DNA鑑定を拒否するんだ? 間違いないならハッキリさせたほうが悠のためだろう?」
科学的に証明されれば夏海も安心できるはずだ。
それを拒否するのはやはり匡の……。そんな思いが聡に胸に去来する。
「双葉とも相談したんだけどな。女が産んだ後に『あなたの子よ』って言うときは、他に心当たりがないときだって言うんだよなぁ。夏海くんもそうじゃないのか?」
「だったら匡が嘘を吐いたというのか? 稔にも聞いた、匡が秘書に手を出してるのは事実だ、と。私は本社にいる友人にも聞いたんだ。奴も間違いないと言っていた。海外事業部に男がいて、それ以外に不倫もしている、と……」
如月は聡の言葉を聞くうちに、何か気づいたらしい。
「なぁ、それって、ようするにお前は子供の父親が問題なんじゃなくて、自分以外の男の存在が許せないだけなんだな」
如月の決め付けを否定することなく、聡は空のグラスを睨みつけたまま答えた。
「たまに……過去を悔いるようなことを言ってる。ハッキリと、騙そうとして悪かった、2度と嘘は吐かない、そう言って欲しいんだ。体の相性がいいのが、結婚の理由でも構わない。2度と金にも困らないし、未婚の母だと見下した連中を、見返してやるだけのものを与えるつもりでいる。悠にも、最高の教育を施して……私の持てる全てを残してやりたい。私の言うことは間違ってるのか?」
「う~ん……いや、判るよ。判るんだけど……」
「夏海は、悠を産むときにひとりきりで酷く辛い思いをしたようだ。ちょうどそのころに、私が帝国ホテルで智香と結婚したことを知ったらしい。確かにアレは私の失態だ。夏海が子供をどうしたか、ちゃんと調査をするべきだった。臨月まで働いても出産費用が用意できず、かなり高利のローンを利用したらしい。まだ、いくらか残ってると言ってた。私が払うと言っても受け取ろうとはしない。知っていたら、絶対にあんなバカな真似はしなかった」
「う~ん……」
切々と訴える聡の隣で、如月は唸るだけであった。
「夏海は私の子だと言って譲らない」
「お前もそう思ってるんだろ?」
「だったらなぜ、DNA鑑定を拒否するんだ? 間違いないならハッキリさせたほうが悠のためだろう?」
科学的に証明されれば夏海も安心できるはずだ。
それを拒否するのはやはり匡の……。そんな思いが聡に胸に去来する。
「双葉とも相談したんだけどな。女が産んだ後に『あなたの子よ』って言うときは、他に心当たりがないときだって言うんだよなぁ。夏海くんもそうじゃないのか?」
「だったら匡が嘘を吐いたというのか? 稔にも聞いた、匡が秘書に手を出してるのは事実だ、と。私は本社にいる友人にも聞いたんだ。奴も間違いないと言っていた。海外事業部に男がいて、それ以外に不倫もしている、と……」
如月は聡の言葉を聞くうちに、何か気づいたらしい。
「なぁ、それって、ようするにお前は子供の父親が問題なんじゃなくて、自分以外の男の存在が許せないだけなんだな」
如月の決め付けを否定することなく、聡は空のグラスを睨みつけたまま答えた。
「たまに……過去を悔いるようなことを言ってる。ハッキリと、騙そうとして悪かった、2度と嘘は吐かない、そう言って欲しいんだ。体の相性がいいのが、結婚の理由でも構わない。2度と金にも困らないし、未婚の母だと見下した連中を、見返してやるだけのものを与えるつもりでいる。悠にも、最高の教育を施して……私の持てる全てを残してやりたい。私の言うことは間違ってるのか?」
「う~ん……いや、判るよ。判るんだけど……」
「夏海は、悠を産むときにひとりきりで酷く辛い思いをしたようだ。ちょうどそのころに、私が帝国ホテルで智香と結婚したことを知ったらしい。確かにアレは私の失態だ。夏海が子供をどうしたか、ちゃんと調査をするべきだった。臨月まで働いても出産費用が用意できず、かなり高利のローンを利用したらしい。まだ、いくらか残ってると言ってた。私が払うと言っても受け取ろうとはしない。知っていたら、絶対にあんなバカな真似はしなかった」
「う~ん……」
切々と訴える聡の隣で、如月は唸るだけであった。