愛を待つ桜
聡を見ていれば判る。
夏海のことを片ときも忘れられなかったのだろう。
彼女に惚れ抜いている。そんな男が、他の女を抱けるはずがない。
1度は未入籍とはいえ、対外的には2度の離婚歴のある38歳の男だ。
相手が子持ちでも文句は言えまい。
一方、誰にでも若さゆえの過ちはある。
3年前の夏海が、言い寄る男と気楽に恋のゲームを楽しんでいたとしても、聡が言うほど、彼女に悪意はなかったのだろう。
未婚の母としてそれなりの苦労を重ね、遊びの恋は卒業したであろう彼女なら、今度は上手く行くのではないか? と、如月は考えた。
考えたのだが……何かがおかしい。
如月は聡とは違い、ときには調停弁護士として個人の依頼も受けている。
人を見る目は聡以上にあるつもりだ。
プライベートは妻ひと筋と言いたい所だが、彼にもそれなりの秘密はある。
好色ではないが、聡より経験は豊富だろう。
そんな如月の目に、夏海は火遊びで年上の男性と関係したり、財産目当て相手を騙したりするような女性には思えない。
時間が経とうと人間の本質はそうそう変わらない。それが如月の持論だ。
実は、夏海が入社してすぐ、如月はかなりあからさまに彼女の腕や肩に触れたりした。
聡の話を聞き、試す意味もあったからだ。
夏海はそんな如月の態度に、まるでバージンのように身を固くした。
軽蔑の眼差しを向ける彼女、慌てて双葉経由で事情を説明した経緯がある。
彼の直感では、夏海の男性経験は限りなくゼロに近いだろう。
これほど警戒心の高い彼女が、聡の誘惑にはすぐに堕ちて、毎夜のように聡の求めに応じるというから、また判らない。
妻の双葉は、
『夏ちゃんは、一条くんのことが好きで堪らないって感じね。苦労承知で産んだのは、よっぽど愛してたんじゃないかしら? なんで別れたのか私には判らないわ』
そうなのだ。
どこからどう見ても、真剣に誠実に愛し合ってるとしか思えない。
かと言って、聡の家族や友人が、奴を騙して罠に嵌める理由も思いつかない。
夏海のことを片ときも忘れられなかったのだろう。
彼女に惚れ抜いている。そんな男が、他の女を抱けるはずがない。
1度は未入籍とはいえ、対外的には2度の離婚歴のある38歳の男だ。
相手が子持ちでも文句は言えまい。
一方、誰にでも若さゆえの過ちはある。
3年前の夏海が、言い寄る男と気楽に恋のゲームを楽しんでいたとしても、聡が言うほど、彼女に悪意はなかったのだろう。
未婚の母としてそれなりの苦労を重ね、遊びの恋は卒業したであろう彼女なら、今度は上手く行くのではないか? と、如月は考えた。
考えたのだが……何かがおかしい。
如月は聡とは違い、ときには調停弁護士として個人の依頼も受けている。
人を見る目は聡以上にあるつもりだ。
プライベートは妻ひと筋と言いたい所だが、彼にもそれなりの秘密はある。
好色ではないが、聡より経験は豊富だろう。
そんな如月の目に、夏海は火遊びで年上の男性と関係したり、財産目当て相手を騙したりするような女性には思えない。
時間が経とうと人間の本質はそうそう変わらない。それが如月の持論だ。
実は、夏海が入社してすぐ、如月はかなりあからさまに彼女の腕や肩に触れたりした。
聡の話を聞き、試す意味もあったからだ。
夏海はそんな如月の態度に、まるでバージンのように身を固くした。
軽蔑の眼差しを向ける彼女、慌てて双葉経由で事情を説明した経緯がある。
彼の直感では、夏海の男性経験は限りなくゼロに近いだろう。
これほど警戒心の高い彼女が、聡の誘惑にはすぐに堕ちて、毎夜のように聡の求めに応じるというから、また判らない。
妻の双葉は、
『夏ちゃんは、一条くんのことが好きで堪らないって感じね。苦労承知で産んだのは、よっぽど愛してたんじゃないかしら? なんで別れたのか私には判らないわ』
そうなのだ。
どこからどう見ても、真剣に誠実に愛し合ってるとしか思えない。
かと言って、聡の家族や友人が、奴を騙して罠に嵌める理由も思いつかない。