愛を待つ桜
(2)祖父母
本当に、すぐに戻るつもりだったのだ。だが、事務所のドアを開けた瞬間、そうは行かないことを知った。
「こんなところで何をしているんです?」
そこに立っていたのは聡の両親、実光とあかねである。
「何を、じゃない! 結婚とはどういうことだ! 私たちは息子の結婚を他人から聞いたんだぞ!」
「そうですよ、聡さん。バツが悪いのは判りますよ。でも、ずっと黙っておけることではないでしょう?」
(――どこでバレたんだろう? 1ヶ月やそこらはごまかせると思ってたのに)
聡は年甲斐もなく、不謹慎な考えをめぐらせた。
「判りました。その件は来週にも家に戻って話します。ですから」
「相手は、あの織田くんか?」
父の言葉に、聡は視線を如月に向ける。
だが、彼は軽く両手を上げ、首を振った。
それに気付いたのか、父は「戸籍を確認した」と付け足す。
どうやらすでに息子の存在も知られているらしい。
「夏海さんの産んだ子供さんを、どうして聡さんが認知したの? 母さんに判るように説明してちょうだい」
そんな母の言葉に、聡は開き直るよりほかなかった。
「理由はひとつです。僕の息子だからですよ」
「そんな馬鹿な話があるか! ちょうどお前が結婚したころに産まれとるじゃないか。それでどうしてお前の実子なんだ!」
「そうですよ! あなたの子供なら、どうして夏海さんと結婚しなかったの?」
ほぼ同時に両親は声を上げた。
その通りだろう。
今となっては、自分でもよく判らない。
あれほどまでに怒って彼女を跳ね除け、辞職後の行方すら探そうとしなかった。
挙げ句に他の女と結婚して……いや、もう止そう。
「こんなところで何をしているんです?」
そこに立っていたのは聡の両親、実光とあかねである。
「何を、じゃない! 結婚とはどういうことだ! 私たちは息子の結婚を他人から聞いたんだぞ!」
「そうですよ、聡さん。バツが悪いのは判りますよ。でも、ずっと黙っておけることではないでしょう?」
(――どこでバレたんだろう? 1ヶ月やそこらはごまかせると思ってたのに)
聡は年甲斐もなく、不謹慎な考えをめぐらせた。
「判りました。その件は来週にも家に戻って話します。ですから」
「相手は、あの織田くんか?」
父の言葉に、聡は視線を如月に向ける。
だが、彼は軽く両手を上げ、首を振った。
それに気付いたのか、父は「戸籍を確認した」と付け足す。
どうやらすでに息子の存在も知られているらしい。
「夏海さんの産んだ子供さんを、どうして聡さんが認知したの? 母さんに判るように説明してちょうだい」
そんな母の言葉に、聡は開き直るよりほかなかった。
「理由はひとつです。僕の息子だからですよ」
「そんな馬鹿な話があるか! ちょうどお前が結婚したころに産まれとるじゃないか。それでどうしてお前の実子なんだ!」
「そうですよ! あなたの子供なら、どうして夏海さんと結婚しなかったの?」
ほぼ同時に両親は声を上げた。
その通りだろう。
今となっては、自分でもよく判らない。
あれほどまでに怒って彼女を跳ね除け、辞職後の行方すら探そうとしなかった。
挙げ句に他の女と結婚して……いや、もう止そう。