愛を待つ桜
「本当にお前の子か?」


ふたりきりになるなり、父は核心を突いてきた。


「悠の顔を見ただろう?」

「幼いころは、4人ともよく似とった」

「何が言いたいんだ?」


夏海と匡の関係を聡が知らなかったら、父はそれを気遣ったのだろう。


「これはあくまでも可能性だが……匡の子供ということも。いや、お前の言うことが嘘だとは言わんが」


父の心遣いが余計に聡を惨めにする。


「遠まわしに言わなくてもいいよ。3年前に匡から直接聞いてる。母さんは知らないんだよな?」

「うむ。知れば複雑だろう」

「なら、母さんには何も言わないでくれ。余計な心配は掛けたくない」


聡はそのまま席を立つと、窓際まで足を進めた。

エアコンで室内の空調は整っている。
だが、息苦しさを感じ、ほんの数センチ窓を開けた。
地上約百メートルの風が、聡の髪を撫でる。


「親子鑑定はしたのか? まだなら、ちゃんとしておいたほうがいいぞ。どちらにしても私たちの孫に違いはないと思うが……お前たちにとっては大違いだろう」


< 98 / 268 >

この作品をシェア

pagetop