月夜のウタヒメ
あたしが王室に入ったわけはその王子の結婚にある。
結婚式に使われるという代々受け継がれるティアラだ。
時価100億とも言われる代物で、王室に嫁いでくる花嫁だけが見ることを許されているものだ。
多分、時期に王子も結婚するだろう。
メイドなら・・・そういう感じ。
とにかく、王子つきになる前に一仕事でもしよっか?
古い時計台が遠くから夜を告げ、月が輝く。
「ラーララララーラー・・・」
「おぃ!怪盗が現れたぞ!!はやく警備のものを呼べ!!
王子様、どうぞご心配なさらないでください。近頃はあのような輩が小ざかしいことばかりするもので・・・。」
「ふぅん、あれが噂の。」
「だっ・・・だめです!!
兵は・・・全滅です・・・、眠っているようで応答しません!!怪盗が!!」
「クソっ!怪盗が逃げ出したぞ!!追え、追うんだ!!」
「准将様、ご機嫌いかがでしょうか?
追うなんて無駄なこと、残り少ない兵が疲れてしまいますよ?
それよりも手薄になられたお屋敷の警備をしっかりなさったほうがよろしいんのでは?」
「泥棒ごときがわしに口出しするんじゃないわい!!
捕まえろ!!」
「ふっ。
それではご機嫌麗いかが。」
「待ちやがれ!!
泥棒猫が!!!」
怪盗は、今日も夜の都に消えていく、
音もなく。
ただ、月だけがすべてを照らしていた。