ラブ・パニック【短編】
1.彼氏ができた!?
「は?」
「だから、バレンタインの返事。オレも里緒(リオ)が好きだから、よろしくね」
バイト先のカフェ『Love Kitchen』。
タイムカードを押そうとしたところで、同じバイトの東(ヒガシ)くんに呼ばれたんだ。
そして、言われた言葉。
そういえば、今日は3月14日。ホワイトデーだ。
告白の返事をもらえる日。
でも、ちょっと待って。
なんか、おかしくない?
だって、バレンタインにチョコなんて渡してないし、ましてや告白なんてするはずがない。
「どうした? 二人でそんなところで話込んで」
「あ、すみません」
慌てて場所を譲って振り返ると、後ろには柚木(ユズキ)さんが立っていた。
あたしより20センチは高い背丈に、短い黒髪。
黒々と濃い瞳。
優しい笑顔。
あたしは柚木さんが好きなんだ。
東くんではなく。
「柚木さん、聞いて下さい! 今日からオレたち付き合うことにしたんです」
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