ラブ・パニック【短編】
好きな人を前にして、何を話したらいいのか、わからなかった。
こういうとき、好きな人の前では緊張して何も話せなくなる自分が嫌いだ。
「……なぁ。東のこと、好きなのか?」
「え?」
いきなり、何?
話題を提供してくれるのはうれしい。
でも、その内容が話しづらいことで、返事に困った。
「悪い、変なこと聞いて」
「あ、いえ。……あの、好きかって言うと自信はないんですけど。東くんの押しに負けて付き合いだしただけだし」
何をバカ正直に話してるんだろう。
でも、好きな人に『別の男が好き』なんて誤解してほしくなかった。
舞さんから奪い取る勇気ないし、もう気持ちを伝えることはないかもしれないけど。
「なら、俺と付き合わないか?」
「は?」
何を言われたか、理解できなかった。