ラブ・パニック【短編】
それは、昨日一生懸命作ったホワイトチョコのケーキだ。
子供みたいに甘い物が好きな彼はホワイトチョコが大好き。
そんなことを知ってる自分に驚いたな。
とにかく、チロルチョコじゃ申し訳なくて。
ちゃんとまともなチョコを上げたくて。
きっと、そう思った時点で、あたしは−−
「悔しいけど、東くんが好きみたい。柚木さんよりずっと」
柚木さんの前では、取り繕った自分しかさらせなかった。
でも、東くんの前だと素直になれる。
隠すことなく、あたしの全てをさらけ出せる。
「あたしの心を奪ったんだから、ちゃんと責任取ってよね」
目の前の彼の顔が、みるみる輝いていくから、あたしもうれしくなった。
「もちろん!」
「きゃっ」
せっかく作ったケーキを潰してしまうんじゃないかと言うくらい、勢いよく抱きしめられ、
そして、
あたしたちは初めてキスをした。