ラブ・パニック【短編】
肩を抱かれて、ぎょっとした。
「う、嘘です! あたし、東くんなんかと付き合いませんから!」
東くんの手を肩から追い払って、体をはなす。
「東くん、なんでそんなこと言うの!?」
「えー、だってオレ、里緒が好きなんだもん。オレと付き合ってよー」
「あたしは好きじゃないし、付き合わない」
唇をとがらせて、東くんから顔を背けると、横からクスクス笑い声が聞こえた。
「おまえら仲いいなぁ」
……はぁ。
ヤキモチを妬いてる気配もなく。
わかってはいたけど、『柚木さんはあたしのことを好きじゃない』って、見せつけられる度に泣きたくなる。
あたしの片思い。
交わることはきっとない。
「ねぇ、付き合って下さいよ」