ラブ・パニック【短編】
東くん!?
思わず、上げられなかったはずの頭を上げて、後ろを振り返ってしまう。
そこには、柚木さんを睨むかのように真剣な瞳をした東くんが立っていた。
「それ、どういうこと?」
背中がゾクリとした。
問い返す柚木さんの声は低くて、怖い。
でも、あたしが答えなきゃ。
あたしのまいた種なんだから、東くんに甘えるわけにもいかない。
「あ、あの、あたし、気付いたんです。柚木さんよりも、もっともっと、東くんが好きだって。だから、ごめんなさい」
一息で一気に言った後、もう一度頭を下げた。
柚木さんからの反応がなくて、やっぱり上げるに上げられない。
鞄を持つ手に力をこめる。
もう泣きそうだ。
どうしたらいいのか、わからない。
そう思ったとき、柚木さんがようやく口を開いた。
「……やっぱり」