ラブ・パニック【短編】
お冷やグラスに水を注いで、準備をしていたら、後ろから抱き着かれた。
「あーもう、うっとうしい」
そりゃあね、東くんもカッコいい男の子だと思うよ。
でかい瞳に、まだ高校生のくせに春休みだからって生意気にも茶色に染めたふわふわの髪。
でも、どちらかと言うと可愛いんだよね。
一つ下ってだけでも可愛く見えちゃうのに、あたしとあんまり背丈の変わらない、小柄な体型だから、余計にね。
あたしは柚木さんのように大人っぽい人がいい。
柚木さんと始めてあったのは、ちょうど一年前の今頃。
短大への進学が決まり、高校卒業間近の春休みからバイトを始めたんだ。
柚木さんはバイトを始めて2年になるベテランさんで、優しく親切に、仕事を教えてくれた。
カッコよくて、大人の男の人。
20歳をこえたばかりの柚木さんは、それまで高校で見ていたどの男子よりも魅力的に感じた。
「ねぇ、聞いてる? 里緒」