ラブ・パニック【短編】
もちろん、あたしではなく、あたしの後ろに立っている柚木さんに。
「どうしたんだよ、舞」
「柚くんに会いたくて」
彼女に駆け寄る柚木さんの後ろ姿を呆然と見ていた。
「あれ、彼女さんですか?」
いつからいたのか。
いつの間にか隣に並んだ東くんが追いうちをかける。
「ああ」
照れた笑顔が胸に突き刺さる。
「バレンタインに告白されて、付き合いだしたんだ」
−−バレンタイン。
あたしが告白出来なかった日。
その日、彼女はがんばっていた。
そして、あたしは気持ちを伝える前に本当に負けたんだ。