HAZE GRASS 〜かすみ草〜[完]
はぁはぁと息が荒い裕美


背中をそっと摩った


「ありがとう」

「でおってことないよ!怖いところ見せちゃったね」


舌を出して可愛く笑った裕美をみてあたしも笑った


「全然!怖くないよ」


手を前で左右に振って否定した


裕美が頭を掻きながら先輩のところに戻って行った


あたしはまたボール磨きを再開させた


1時間ぐらいでボール磨きが終わった


背伸びをしてから周りを見回すと、試合が始まっていた


「ねぇ、あなたこれ一人でしたの?」


見知らぬ女の子があたしを不思議な目でみてきた


「あっ、うん。そうだよ」

「すごいね!お疲れ様」


誰なんだろうこの子


あたしに話しかけてくるなんて、よっぽど人見知りがないんだね


「試合、一緒に見よ」


あたしの隣に腰をおろして、大きな声で応援し始めた


彼女はいまでも誰だかわからない


でも、彼女があたしに話しかけてきてくれたから今笑ってるんだ


その子は試合が終わるまで話しかけてくれた、さっきまでの直ちゃんのことを忘れていた


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