HAZE GRASS 〜かすみ草〜[完]
震えて声を殺して泣いているあきちゃんをぎゅっと抱きしめた


「俺には兄貴がいんだ、兄貴は俺の4つ上で、当時大学行っててなそのとき帰ってきてなかったんだ。だから兄貴だけは俺から奪われなかった」


お兄さんいるんだ


「あきちゃん、あたしはあきちゃんの前から絶対いなくならないよ!」

「千紗、ありがとな」


あきちゃんもあたしを抱きしめてくれて、あたし達はず―っと抱き合っていた


少し離れてあきちゃんの顔をジーと覗いていた


あきちゃんの顔が少しずつ近づいてきてあたしの唇とくっついた


あきちゃんは、どれだけ辛い思いをしてきたんだろう


あたしにはわからないほどの苦労と悲しみがあったんだろうな


「今...今はどこに住んでるの?」

「兄貴がこっちで就職していま一緒に住んでる」


そっか、お兄さん帰ってきたんだ


「よかった、あきちゃんが一人じゃなくて」


抱きしめる力を強くする


「千紗は体も小さいけど力も弱いな」

「どうせあたしは小さいし力もないし泣き虫だ...しっ」


あきちゃんの悲しそうな笑顔を見て涙があふれた


あきちゃんの気持ちは分からない、どんなにつらくて苦しかったか、でも一緒に泣いてあげることはできる


あたしにもできることがある、それは一緒に泣いてあげること


「泣くなよ」


ぐしゃっと髪をなでてあきちゃんは桶をもって、リビングを出て行った


「ゆうちゃん?おきれる?」


雄ちゃんが気になって話しかけてみると、パチッと眼が開いた


「俺の前でいちゃついてんなよな」


ニヤッと嫌な笑みをあたしに向けた


みられてた!?


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