ひとつぶのナミダ
「柚希、いい加減俺の女になれよ」
女はちょろいちょろい。
そんな表情を浮かべた彼に私は言った。
「いいよ。明日から風俗嬢になる。」
「は?」
彼がたばこを吸う手を止めた。
「お店…入るから」
「そっか、じゃあまた連絡するよ」
彼は、また背広を着て街に出る。
私は、服を着て家に帰る。
「今日は寒いですね」
タクシーの運転手が声をかけてきた。
「そうですね…」
無理だとわかっていた。
騙されてるとわかっていた。
なのに…何でとまらなかったんだろう。
あの関係が1年続いたのは、私の体から生まれる大金が見えていたから。
だから、続いたんだ。
色管されてるなんて馬鹿みたい。
少しだけ…笑えた。
だけど、涙は溢れ落ちた。