ひとつぶのナミダ

「…何かありました?」


運転手が声をかける。


まだあどけない顔をした私の涙に反応してくれた。



「騙されてた」



言葉が震えた。



唇を噛み締めて、涙を堪えた。



「まだ、お若いんだから。男は星の数ほどいますよ。」



「そう…ですよね」



グッと拳を握った。



本当は悔しくて…悔しくて。




「ありがとうございます」




タクシーを降りて部屋に入る。




高校生活も残り2ヵ月。
制服を眺めながら、桃に電話をかける。





「もっしー?ゆずりん何してんのー?今日は拓やん来てんのにー」


ガヤガヤと雑音で上手く聞き取れない。



「桃、聞こえない」



「あーっごめんごめーん」



「今日も、パチンコ?」



桃は大のギャンブル好き。

彼氏と一緒にパチンコ屋にいることが多い。



「だって今日イベ日だよ!?爆発中~♪」


「そっか、ならいいやまた」


「え!?ちょっと」


桃の言葉を聞くことなく私は電話を切った。





「ゆずー!ご飯は!!」



母親の声が聞こえる。



「いらない!!」



大声で返答する。
投げやりな態度で。



「ただいまくらい…言えばよかった」



携帯を意味もなく眺める。



どうすればいいかわからないから。




ひとりだからー。
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