ランデヴー
でも。



彼には……家庭がある。


私は最初からそれを知っていたし、もちろん好きになる予定もなかった。



それでも一度惹かれてしまうと止まらない。


ダメだと思いながらも、どうしても目で追ってしまう。


気持ちが止められない。



いけないことだと知りながら、距離を縮めようとしたのは私の方だった。


それでも関係を先に進めたのは、彼だったように思う。



彼も私と同じ気持ちを抱いてくれていたのだと知った時は、本当に嬉しかった。


悲しかったけど……嬉しかった。



彼は決していい加減な気持ちでいい加減なことをするような性格ではない。


そんな彼が一線を越えた……そのことが他の何に例えようもなく、ただただ嬉しかったのだ。


お互いに止められない気持ちを持っていた、それだけで満足だった。



――はずなのに。
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