ランデヴー
「ゆかり……その……。この前は――」
玄関の扉を開けたその先には、少しバツの悪そうな顔をした陽介の姿。
その顔を見た途端、私は陽介の言葉を最後まで聞かずに両手を広げて無言で飛びついた。
ジャケットをギュッと握り締め、全ての力を出し切る程に強く強く抱きつく。
「ゆかり……」
戸惑ったように私の名前を呼び、優しく私の背中に腕を回す陽介の温もりを感じ、私はやっと長いトンネルを抜けたような気がしていた。
「お願いだから、もうあんなこと言わないで。お願いだから……」
何もかも全てを陽介にぶつけるようにただひたすらにその胸に顔を埋め、私はうわ言のように呟いた。
「うん……悪かった。もう、言わないから」
陽介はそう言って、宥めるように背中をトントンと優しく叩いた。
それだけで、幸福感が胸いっぱいに広がる。