ランデヴー
そう、ただこうしてくれるだけで良かった。


――最初はこれだけで何もいらない程に嬉しかったのに、私はなんて欲張りになってしまったんだろう。



でも今の私には陽介が必要なのだ。


どうしてもこの腕を離したくない。



いつまでも離れない私に陽介は困った様子で、とりあえず引き摺られるようにして家の中へと入ることになった。



ソファに座って見つめ合うと、涙が溢れてきて止まらない。


もう自分では制御不可能なくらいに、私の涙腺は崩壊していた。



両手で私の顔を包み込みそれを拭いながら、陽介はキスをくれた。


優しく、何度も、唇に唇で触れる。



「もう……会えないかと、思ったんだから……」


「うん、ごめん」


「陽介、いないと……嫌だから……」


「うん……」


陽介は困ったように笑って、私の手を取りふわりと撫でる。
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