ランデヴー
「やめてよ! 何でそんなこと言い出すの!? 私そんなの考えたくない!」


「ゆかり。大事な話だから。良く聞いて欲しい」


「嫌、聞きたくない。そんな話、したくない。私別に結婚なんてしたくないし、陽介が望むならずっとこのまま傍に――」


「ゆかり」


静かにそう名前を呼ばれ、ハッとした。


いくら勢いから出た言葉だとしても何てことを言ってしまったんだろうと、即座に深い後悔の念に襲われる。


重い……こんな言葉、重いだけだ。



「うぅ……っ」


あまりの辛さに陽介の顔を見ていられず、私は両手で顔を覆った。


手のひらでは受け止めきれない涙が、指の間からこぼれ落ちていく。



「ゆかり……そんなこと言わないで。お願いだから……ちゃんと聞いて欲しい」


「…………」


「今すぐ、とは言わない。でも……もし。もしもゆかりの中で他に少しでも気になるヤツが出てきたとしたら。ゆかりにその準備ができたら。その時は……新しい生き方を選んで欲しい」


「…………」


「俺だけを見つめて、生きないで欲しい」
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