ランデヴー
そう言えば……入社当初に配属された総務部では、みんなに合わせて外食していたこともあったなぁと。


古い記憶が脳裏をかすめた。



あそこは女子が多かったし先輩も厳しかったから、そう簡単には断ることができなかった。


ふとゆるゆると過去を辿っていたことに気付き、軽く首を振る。


あの頃のことは正直思い出したくもないし、封印したい記憶だった。



私は目の前のお弁当を片付け始める。


大抵が前日の残り物だが、手抜きをする時は冷凍食品を使ったりもする。


モグモグと忙しく口を動かしていたら、視界の端を見知った姿が過ぎった。



「ゆっかりー!」


弾むようにスキップでもしそうな勢いでやってきたのは、佐和子だった。


抜かりなく化粧直しをしたのがバレバレだ。



「アレ、噂の倉橋君は?」


「やっぱりねー、来ると思った」


「そりゃぁ女子達が騒いでる彼の顔、1度は直接拝んでおかないとね。情報通としては」


バチンとウインクを飛ばして、今は不在の倉橋君の席に腰掛ける。
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