ランデヴー
実は私は、車デートというのが初めてだ。


都内にいれば車なんてほとんど必要ないし、学生時代に付き合っていた彼は車を持っていなかった。



もちろん仲間内でわいわい大勢で出かけたことはあるが、車内で好きな人と2人きりという状況は、私をやけにドキドキさせる。


しかも、普段絶対にこうなることのない2人。


緊張しない訳がない。



「コンビニとか、寄る?」


陽介に尋ねられ、私は小さく首を振った。


そして、駅前のコンビニで既に買っておいたホットのお茶を取り出すと、蓋を開けて陽介に手渡す。



「はい」


「サンキュ」


ハンドルを握りながら器用にそれを受け取った陽介は、「あったかい」と言って嬉しそうに笑う。


その横顔に、胸がキュンと弾んだ。
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