ランデヴー
「不倫は文化じゃない! 犯罪にも匹敵する!」



なんて昔流行ったらしい名台詞とやらを持ち出して力説してたっけ。


そんな風にストレートに異を唱える佐和子は、私のことを本気で考えてくれてるんだって感じて、嬉しかったのを覚えている。


彼女は今でも認めてくれた訳ではないが、頑なな私の姿勢を見てそこまで否定的な態度ではなくなった。



「全く……ゆかりさんはいつになったら、自分の幸せに貪欲になれるんですかねッ!」


「…………」


こうして吐き捨てるように嫌味はちゃっかりと言ってくるけど。



私は今でも十分幸せだからいいんだ。


先が見えなくても、いいの。



「そういう、今が幸せならいいやって刹那主義って、どうなんだろうねッ?」


私の気持ちを見透かしたように、尚もチクチクと突いて来る。



佐和子の言うことはいつも正しい。


正しいからこそ、だからと言って大人しく従うことができない私は、いつも何も言えなくなってしまうのだ。
< 21 / 447 >

この作品をシェア

pagetop