ランデヴー
いつも聞かないようにしていた陽介の学生時代の話に興味が湧いたが、それと同時に少し胸がざわつく。


そこには私の知らない陽介と、その隣には……奥さんがいるはずなのだ。



「そ? まぁ卒業してからは……山には行かなくなったかな」


「え、何で?」


「いや……何となく。ほら、忙しいし?」



そう答える陽介に、私は一瞬違和感を感じた。


寂しそう……というよりも、悲しそうな、そんな光をちらりと覗かせた気がした。



何かあったの……?


直感的にそう感じたが、そんな表情の陽介にこれ以上突っ込むことはできなかった。



誰にでも、人には触れられたくないことはある。


私だって……倉橋君との間に起こった出来事を、陽介には隠しているのだから。



「こうして向かい合わせに座ってると、あの頃思い出すね」


陽介の変化に気付かないふりをして、私はふと思ったことを口にした。


2人で外食をすると、出会った頃のことを彷彿とさせる。
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